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​【対談企画 with のりのり】
髙山拓海(劇作家・演出家)
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のりのり
(グラフィックデザイナー)
​(後半)

ロマングラスという舞台創作の場で何度もタッグを組んできた劇作家・演出家の髙山拓海と、グラフィックデザイナーののりのり。
〈舞台チラシ〉を中心に初めて行う対談は、次第に熱を帯びていく。

​​​

― AIとデザイン ―

 

のりのり:この前、僕が所属している団体で劇場を探してたんですけど。生成AIを使ったチラシが多くホームページに掲載されてる劇場があって。

髙山:え、本当に!?

のりのり:メインビジュアルがもろ生成AIで作ったイラストとかで…。なんか、デザイナーとして複雑な気持ちでしたね…。

 

髙山:すごいね…!やっぱり演劇にAIって入り込んでるんだね…!俺は台本を書いてるから、生成AIで書いた文章が人間にかなり近づいてきてることに切迫感を抱えてるけど…。よくよく考えると、今一番切迫感を抱えてるのってデザイナーの人たちかもしれないね。誰にでも簡単に作れるわけでしょ?

 

のりのり:そうですね。「チラシ作って」って言えば出てきますから。でも、僕としてはそれも悲観はしてなくて。

 

髙山:え、そうなの?

 

のりのり:生成AIを使えば、誰でも簡単に画像やイラストを作れますけど、本当の意味でその良し悪しってわからないと思うんです。例えば、生成AIで作ったチラシが、“本当に自分たちが解決したいと思ってる問題を解決できるデザインなのか”とか。“それを受け取った人がどういう印象を受けるのか”とか。AIだと目的にあったデザインになってるかどうかがわからないので、デザインできてるようでできてないんです。

 

髙山:なるほどね。「人間がそのデザインを見た時にどう感じるか」まではAIは考えられないってことか。

 

のりのり:考えられるようになっていくのかもしれないですけどね。まだそこの判断はできてない気がします。それに、AIが提示したものに対して、デザイナーじゃない人がその判断をするのって結構難しいんです。だから、これからAIが発達してきても、デザイナーに依頼する意義はまだ残っていくのかなって思ってます。もちろんAIを駆使してデザインするデザイナーも出てくるでしょうけど…。

 

髙山:うまく共存してね。それは出てくるだろうなぁ。

 

のりのり:僕は、クリエイティブのクオリティだったりとか、プロジェクトに合わせたデザインを作るのを担保するのがデザイナーだと思うので。本当にチラシを効果的なものとして求めてる人はこれからもデザイナーに依頼するんじゃないかなって思ってます。

 

髙山:今それを聞いてて、のりのりからデザイナーのプライドみたいなものを感じたよ。それもきっとAIにはないものだよね。「◯◯だから絶対に揺るがない」って自信を持って言えるプライドって、きっとAIは持たないし、そのプライドに惹きつけられる人もいると思う。すごく素敵なことだよ。

 

のりのり:ありがとうございます。

 

髙山:AIを使ってチラシを作成してるところは、デザインできる人がいないからAIで、ってことなのかな?

 

のりのり:そういうところもあると思います。

 

髙山:もちろん、できない部分をAIに補ってもらうっていうのは、1つの共存の仕方だと思うけど…。それってAIが劇団の色になっちゃう気がしない?

 

のりのり:そうですね。〈AIを使ってる〉って印象が強くなっちゃう気はします。髙山さんもおっしゃってたように、チラシって一番最初にお客さんが見るものだし、劇団の顔になるようなものだと思うので。

 

髙山:まさに旗だよね。

 

のりのり:やっぱりチラシを見ると熱量も伝わってくるじゃないですか。それでお客さんの期待値も変わってくると思うので。「生成AIを使ってます!」って感じが全面に出てるチラシだと、ちょっと寂しい気持ちになりますね…。

 

髙山:今、〈劇団の旗〉って話があったけど、それは団体とデザイナーさんとの出会いや相性にも左右されるよね。俺は、自分の思い描くテイストや、「こういうふうにしたい!」って想いに一緒に色を重ねてくれるデザイナーさんって、結構稀有だと思ってて。色んなチラシを見てて、「この劇団・この作品はこういうことをやってるから、もうちょっと違うデザインの方が良いんじゃないの?」って思うところもある。例えば、すごく爽やかな作品を多くやってるところが、極彩色っぽいチラシとかを使ってると、捉えられ方が違うから見に来るお客さんも違ってくるだろうし。もちろん、「そのギャップがいい!それも含めて私たちなんだ!」って言われればそうなのかもしれないんだけど。でも、きちんと狙ったところに狙った色を届ける技術を持ったデザイナーさんと出会うことは、劇団にとっては財産だと思うんだよ。

のりのりは自分も劇団に所属してるよね。のりのりにとって〈劇団にとってのチラシ〉ってどういうものなの?

 

のりのり:難しいですね…。(笑)でも、やっぱり劇団の顔になるものだと思います。作品を見る人って限られてると思うんですけど、チラシを見る人はもっと母数が多いと思うんです。仮にチラシの公演を見にきてくれなかったとしても、チラシから団体のイメージみたいなものがついていきますから。すごく重要なものですよね。

 

髙山:そうだね。でも、(演劇に限らず)チラシって予算とか、できる人と出会えなかったりとかで、結構なあなあに作られてるところも見かけるんだ。そういうのを見ると、やっぱり切ない気持ちになったりするよ。

 

のりのり:団体さんによっても変わってくると思うんですけど、チラシデザインとかロゴデザインとかは、やってる側のスタッフとか、対外的な人たちだけじゃなくて、団体自身にとっても立ち返る場所になるのかなって思うんです。「自分たちはこういう作品を作っていくんだ!」みたいな。全員で共有する1つの目標や意識として立ち返る場所でもあるのかなって。

 

髙山:それはとってもわかるな。俺もたまに、ロマングラスのホームページを見返したりするよ。過去公演のチラシを見て、「ああ、俺の作ってる作品のテイストってこうだよなぁ」って。自分にとってチラシは、客観的かつ視覚的に自作や団体の色を見せてくれるものだと思う。やっぱり内側にいるとわかんないところってあるんだよ。でも、チラシってそれをすごくわかりやすく表してくれるよね。団体の色を自分たちが確かめたり、自分たちが進んでいく方向を決めていくための道標みたいな。だから、俺はもし他のデザイナーさんにお願いするってなったら、ある程度自分のテイストを知っててほしいし、逆に自分も、相手のテイストを知った上でお願いしたい。そうすれば、お互いの強みをより出していけるだろうなって思う。

 

のりのり:大事なことですね。

 

― お互いから見た演劇 ―

 

髙山:のりのりは宣伝美術ってポジションで演劇と関わる機会が多いと思うけど、演劇のどういうところが好き?

 

のりのり:うーん…、難しいですね…。

 

髙山:ごめんね、難しい質問ばっかりしてるね。(笑)

 

のりのり:(笑)でも、時期によって楽しんでる部分は違うと思います。それこそ、宣伝美術はずっと続けてますけど、最初は高校の演劇部で役者から始めましたし。大学に入ってからは制作をやったりもして…。でも、それぞれ楽しんでた部分って違くて…。うーん…、そうですね…。髙山さん先に聞いてもいいですか?

 

髙山:俺が思う演劇の好きなところは2つあって。1つは想像性の高さ。演劇が映像と違うのは、やっぱり本物を持ってこれないことだと思うんだ。何もない舞台で「ここ海です!」って言っても本物の海はないし、「ここに土があって」って言われても本物の土をひけることって少ないでしょ? でも演劇って、役者さんが「私が海に行くと…」とか言うと、もうそれだけで海が見えてくるんだ。そこにスタッフの人たちが光や音を使って、より情景を深めてくれる。映像ならそこに映ってる風景は本物じゃん? ロケしたら、海とか、山とか、本物が撮れるよね。現代だと合成できちゃうから一概には言えないけど…。(笑)でも、演劇は本物を出せない代わりに、頭の中で本物が広がっていく。しかも人によって思い描く本物は違う。そこが演劇って媒体の面白いところだなって思ってる。

もう1つは〈場〉だね。映像とかだとものによっては1日で撮り終えたりするじゃん? 演劇は、長い期間1つの作品に集中して向き合わないといけないでしょ。合う人とも、合わない人とも。もちろんそれがしんどいって人もいるだろうけど…。でも、すごく〈人間と一緒にやってる〉って実感がある。俺はそれがすごく好きだよ。

 

のりのり:面白いですよね。

髙山:少し話が逸れるけど、期間が長いって特徴のおかげで、自分は脚本と演出ができてると思ってて。俺は瞬発的な発言がすごく苦手で、準備に時間をかけないとできないんだよ。その点、脚本は長い時間準備できるし、演出も読み解きとかに時間をかけてプランを練れる。もちろん、稽古場に行って「そんな考え方があるんだ!」ってワタワタしちゃうこともあるんだけど…。それでも、自分の考えを言葉にしていく過程に時間をかけられるっていうのは、自分が脚本・演出を担える理由の1つだなって思う。

 

のりのり:人の好きなポイントを聞くのってめっちゃ面白いですね。(笑)

 

髙山:出た!「聞くのが好き」!(笑)

 

のりのり:僕が聞いてて思ったのが、いろんな人が集まって、いろんな思いを持って1つの作品を作り上げていくっていう空間や場は、やっぱり面白いですよね。僕はいち観客として演劇が面白いと思うのは、同じ空間を共有してる役者さんが目の前で1人の人生や生き様を見せてくれるっていうことですね。やっぱり映像とは違う感動があります。

 

髙山:ね!役者さんが舞台上でただ立ってるだけで心震える瞬間ってあるよね。

 

のりのり:はい。生の感動というか、やっぱり体験ですよね。それに、デザイナーとして演劇に関わっていく上で面白いなって思うのは、僕は演劇以外のデザインの仕事もやるんですけど。デザイン自体が、誰かの思いだったり、商品や公演だったりの良さを伝える、〈手紙の代筆者〉みたいな意識でデザインをしてて。

 

髙山:すごいおしゃれな表現だ!!

 

のりのり:そういう側面に面白さを見出してますね。「自分の作品を作るぞ!」というより、「この素晴らしい思いをみんな見てくれ!」って伝えたいし、楽しんでほしい。そういった意味で、演劇はいろんな人の思いが詰まった芸術なので。そこに自分も携わるっていうのは面白いですね。

 

髙山:今話を聞いてて、同じだなって思ったのは、〈人がそこにいる〉ってところだね。俺ものりのりも〈場に集った人たちが好き〉だったじゃん? やっぱり人に希望を持ってる、持とうとしてる人が演劇をやってる気がするな。

 

のりのり:確かに、そうですね。

― 演劇との距離感 ―

髙山:ちなみに、今、この対談が行われてる時は、まだ3月にやる公演のチラシは上がってない状態なんですが…。どこまでできてる?

 

のりのり:…正直あまりできてないです。まだイメージボードを作ってる状態ですね。

 

髙山:イメージボードを作ってから完成までってどれくらいかかるの?

 

のりのり:イメージボードからラフまでが一番長くて…。それが約6〜7割くらい時間を占めてるかもしれないです…。

 

髙山:そこからの作業は短いんだ?

 

のりのり:作業自体はそんなに…。なるべく作業したくない人間なので…。考えるのは楽しいんですけど…。

 

髙山:わかる、わかるよ!

 

のりのり:作業の効率化、みたいなところはAIに頼ったりして…。

 

髙山:AIと上手く共存してる人だ!

 

のりのり:良いとこ取りしてます。(笑)

 

髙山:のりのりから送ってもらうチラシはいつも本当に、めちゃくちゃ楽しみにしてるよ。

 

のりのり:毎回めちゃくちゃドキドキしながら送ってます…。

 

髙山:この対談が出る頃にはもうチラシや情報は出てると思うんだけど、今回は〈距離感〉をテーマにして作っててね。

今、俺にとって演劇は、こちらから向かっていくものではなくて、俺たちを包括してるもの、包み込んでいる大きなもの、みたいな気がしてるんだ。俺たちがここに集まって行っていること全てが演劇の一部、みたいな感覚。それこそ、のりのりと次の公演のチラシの話をしていることもそう。そこが昔と比べて距離感が変わった気がする。前までは演劇に対して「頑張って向かっていかなきゃ!」って思ってたけど、今は「何をやっても、すでに包まれてる」っていう、ちょっと受け身な状態。ただ見方が変わっただけかもしれないけど…。でも、この考えでいくと、演劇を始めてみよう、何かしらのポジションで関わってみようって少しでも思った人たちも、思った瞬間からすでに演劇に包まれてる気がするんだ。ちょっと変な感覚なんだけどね。

 

のりのり:なんかしっくりきますね。「演劇に包まれている」か…。

 

髙山:お金とか、時間配分とか、生活面での距離感はまだまだ難しいんだけど…。(笑)

 

― 舞台チラシの変化 ―

 

髙山:本題に戻るんだけど、のりのりは最近の舞台チラシについて、変化してきてるなって思うことある? 

 

のりのり:やっぱり紙を刷る枚数が減ってきた影響もあるのかもしれないんですが、紙で出ない色とかが使われるようになってきたなっていうのは、最近感じますね。

 

髙山:紙で出ない色?
 

のりのり:普通にCMYK(※)の4色で印刷すると、「この色印刷できないだろうなぁ」って思うような色を使ったチラシをよく見かけます。

 

髙山:チラシとしては刷られてるのを見てってこと?

 

のりのり:SNSとかで見かけたりします。

 

髙山:なるほどね!

 

のりのり:やっぱりネットに主軸が置かれてきてるのかなっていうのは感じますね。あるいは、印刷を意識するデザイナーさんが減ってきているのかも…。印刷物は工業製品なので、色だけじゃなくて、多少のズレとかもあるんですよ。だから、パソコンやスマホで見た印象を紙で保とうとすると、余計お金がかかっちゃって…。

 

髙山:ええー!

 

のりのり:それでも普通に印刷しちゃうことがほとんどだと思いますが…。

 

髙山:でも、色が変わっちゃうわけでしょ?

 

のりのり:変わっちゃったり、見切れちゃったりしてますね。

 

髙山:そっか、データと紙じゃ意識すべきポイントも違ってくるんだ。

 

のりのり:そうですね。印刷所で見てると、なかなか印刷しづらいデータが送られてきたりします…。

 

髙山:この話、表に出せるのかなぁ…。(笑)

 

のりのり:まあ、あまり紙が主役じゃなくなってきてるんだろうなって思います。

 

髙山:ネットのバナー広告とか最近多いもんね。きっとYouTubeとかXとかに載せるためのデザインとか、すごく増えてるんだろうな。

 

のりのり:増えてますね。僕も紙よりスマホで見たときの印象を重視して作ってほしいって注文を受けること結構あります。

 

髙山:やっぱり傾向変わってきてるんだ。

 

のりのり:ただ、紙媒体が0になるっていうより、お互いの良いとこどりをしていくんだろうなって気がしてます。

 

髙山:SNS用のデザインと、紙のデザインとが上手く共存していければ良いよね。そしたら、素敵なデザインがもっとたくさん増えていくんだろうな。

のりのりは、これから「こういうデザインしてみたい」っていうのはある?

 

のりのり:やっぱり〈印刷する意味〉を持たせたデザインはしたいですね。より面白い〈体験としてのチラシ〉とか作ってみたいです。

 

髙山:より面白い〈体験としてのチラシ〉?

 

のりのり:持ったときに「おっ!」ってなるようなチラシが作れたら良いですよね。それこそデザインだけじゃなくて、印刷も含めて。印刷屋さんも一つ一つ工夫して作ってたりするので、印刷っていう工程も含めた作品を作ってみたいです。

 

髙山:いいね!それはぜひロマングラスでやらせてもらえたら!

 

のりのり:ぜひお願いします!!

対談会場 : 赤坂RED/THEATER

※…印刷物の色を表現する「C:シアン、M:マゼンタ、Y:イエロー、K:ブラック」の4色

 

髙山拓海

劇作家/演出家/俳優2017年に日本大学芸術学部演劇学科劇作コースへ入学。

大学在学時に舞台創作団体ロマングラスを旗揚げ。「耽美的なまでの悲劇」を基盤とした物語性に富む作品を多く創作し、その作風は「大人の童話のよう」と評されている。

長野県創作脚本賞優良賞、佐藤佐吉賞2023優秀演出賞・優秀音響賞 受賞。

 

のりのり

フリーランスのグラフィックデザイナー/DTPオペレーター/フォトグラファー。

PORIDE、劇団zzZ°所属。学生時代より多くの企業・演劇団体の宣伝美術を務める。

ロマングラスの第3回公演より宣伝美術を担当。
 

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ロマングラス番外公演

『まわれサクラ、再びの春へ』

【出演】
伊波悠希、島田遥、まるも、髙山斐七子

【スタッフ】
作・演出 | 髙山拓海 音楽 | エムオカ 舞台監督 | 松林京子 

宣伝美術 | のりのり 企画・制作 | ロマングラス

 

【協力】
劇団ひまわり/街の星座/ノクチルカの実験室/PORIDE/劇団zzZ°

【会場】
スタジオ空洞
https://studiokudoh.blogspot.com/?m=1

JR線/東武線/西武線/東京メトロ各線
「池袋駅」西口下車 徒歩7分

【日時】
2026
3/27(金) 14:00☆ | 19:30
3/28(土) 13:00 | 18:00
3/29(日) 13:00
☆…公開ゲネプロ
(ゲネプロ:本番同様の条件で行うリハーサル)
※受付は開場の30分前
※お支払いは現金のみ
※全席自由・受付順入場

【チケット】
https://ticket.corich.jp/apply/423617/

一般(前売り) | ¥3,500
ゲネプロ割  | ¥3,000
応援チケット | ¥5,000
当日券           | ¥4,000
※未就学児入場不可
※ゲネプロ割は3/27(金)14:00の回のみ適応
※公開ゲネプロは応援チケットでのご予約不可

【扱いチケット】
伊波悠希
https://ticket.corich.jp/apply/423617/005/

島田遥
https://ticket.corich.jp/apply/423617/006/

まるも
https://ticket.corich.jp/apply/423617/004/

髙山斐七子
https://ticket.corich.jp/apply/423617/003/

 

【 応援チケット特典 】
応援チケットをご購入いただいた方に、作中の登場人物たちの

予定を記載した「卓上カレンダー」をプレゼント!
※応援チケットの特典引換は当日会場にて行います。

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