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​【対談企画 with のりのり】
髙山拓海(劇作家・演出家)
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のりのり
(グラフィックデザイナー)
​(前半)

ロマングラスという舞台創作の場で何度もタッグを組んできた劇作家・演出家の髙山拓海と、グラフィックデザイナーののりのり。
〈舞台チラシ〉を中心に初めて行う対談は、次第に熱を帯びていく。

―出会い―


髙山:出会ったのはいつだっけ?

のりのり:『それは、レモンと白昼夢』(※1)の時が初めてでしたね。

髙山:俺が大学卒業して3年くらい経った頃の作品だね。…え、もう4年前!?

のりのり:あの頃、僕二十歳でした…。

髙山:その時にお願いしてからずっとだね。

のりのり:はい。毎回お願いしていただいて…。

髙山:本当にいつもありがとう…!!

のりのり:こちらこそです!!

髙山:最初は知り合いの制作さんが紹介してくれたんだよね。初めて名前聞いたときはびっくりした。「え、のりのり…!?」って。(笑)

のりのり:まず名前でびっくりしますよね。(笑)

 

髙山:そこでデザインを送ってもらって。それを見て「あ、この人にお願いしたい」って思ったんだよ。

のりのり:そのときだと、しあわせ学級崩壊(※2)さんとか、名前はない劇団(※3)さんとかですね。

髙山:そうだったそうだった! のりのりいつから舞台チラシを作ってるの?

のりのり:僕、高校生の頃から演劇部でチラシを作ってて。僕以外パソコンを持ってる人がいなかったから、「じゃあ作っといて」って言われて作り始めたのがスタートでした。

髙山:高校生の頃からチラシデザインをやってる人はレアだね。

のりのり:ですね。

 

髙山:俺が初めてのりのりのデザインを見たとき、「情報を適切に伝えるのが上手い人だな」が第一印象だった。あと、作品にすごく寄り添ったデザインをしてくれるなって。
チラシって結構インパクト重視だったり、主張が強かったりして、それ単体を「好き!」ってなれちゃう媒体だと思ってるんだけど。のりのりのは作品にきちんと寄り添おうとしてくれる優しさみたいなのを感じて。それがすごく好きだなって思ったんだよね。

 

のりのり:ありがとうございます。照れちゃう…。(笑)

髙山:(笑)

のりのり:やっぱりチラシを作るときって、「自分が面白いと思った作品を伝えたい!」だとか、作品を見てくれるお客さんのことを思って作ることが多いので。自己表現としてのデザインというよりは、「その作品の魅力を伝えたい!」って思ってデザインすることが多いです。

髙山:自分主体って感じではない?

のりのり:そうですね。自分の色みたいなのはどうしても出てきちゃうものなので。特に出そうとか、出さないようにとかは思ってないです。一番は、依頼してくれたお客様の作品とか、商品とかの魅力を伝えるにはどうすればいいかを考えて作ってます。

 

髙山:多分、俺はそういう〈寄り添ってくれる優しさ〉に温かみみたいなものを感じたんだよね。自分があまり自己主張できるタイプじゃないから余計に。

のりのり:そういう部分は高山さんと近いかもしれません。

髙山:本当に!?

 

のりのり:ガンガンこられるの苦手とか…。(笑)

髙山:(笑)多分、表現においては自分の軸とか、「自分はこうしたい!」って強く主張することが大事だと思うんだけどね。
でも、「やりたいこと」があっても、主張するのが苦手とか、ガンガンいくぜ!みたいな強い出力に変換できない人もいて。
俺はそういうタイプだから、「君はどういうことがしたいの?」って相談に乗ってくれる人の方が話しやすかったりするんだ。
のりのりもめっちゃ話聞いてくれるよね。

のりのり:ヒアリングは好きだし、デザイン作業の中でトップレベルで大事にしてますね。まず自分が相手の売りたいものの面白さを見出して、面白がることを第一にしたいので。とにかくいっぱい聞きたくなっちゃいます。

髙山:もっとこの人のこと知ろうってされたら聞かれる方も嬉しくなるからいいと思う!
稽古場もそういう場所でありたいよね。一人が「こうしたいからみんな従え!」っていうのは息苦しくなっちゃうからさ。お互いに相手のことを聞き合える稽古場でありたいよね。

のりのり:そうですね。

髙山:のりのりは、ロマングラスにはどんなイメージを持ってる?

のりのり:ロマングラスさんはいちお客さんとしてむちゃくちゃ好きで…!シンプルに作品のテイストみたいなのが癖にハマる。(笑)

 

髙山:やだ、照れちゃう。(笑)

のりのり:僕は悲劇とか、退廃的な作品とかが結構好きで。でも、ただただ重たい空気で終わる作品よりかは、ちょっと前を向いて終わるような作品が好きなんです。ロマングラスさんはまさにって感じです。

髙山:毎回お願いしてる人にこういう感想もらえるの嬉しいなぁ…!

のりのり:あと演出が綺麗ですよね。言葉もそうですし、視覚的な情報とかも綺麗で。ここまで設計されてるのか…って。上から目線になっちゃうかもしれないですけど、上手く組み立てられたストーリーだなぁって思います。むちゃくちゃ髙山さんの演出好きなんですよ。

髙山:え、何が欲しいの?(笑)

のりのり:(笑)

髙山:自分はその人たちが元々持ってるものを一番大事にしたくて。俺が思ってる通りに100やるのは、人とやる意味がない気がするんだよ。やっぱりコンピューターと違って人ってミスするし、こっちの予想とは違うことやったりするじゃん? 最初は意思疎通が図れなかったりとか…。
そういうストレスをひっくるめて、〈人間を描く〉ってことなのかなって思ってる。もちろんノーミスやノンストレスは素晴らしいことだけど、「ミスしちゃう」「ストレスを感じちゃう」のも人間だから。そこを肯定してあげたい。出来ないを否定するのは簡単だけど、出来ないって思ってる人たちに「それはすごく素敵なところだよ」って言いたいし、それが上手くハマるように作品を作りたい。

 

のりのり:髙山さんの作品を見ててすごく面白いなって思うのが、登場人物たちが目の前で生きてる実感がすごくあって。役者さんのひとつひとつの言葉や表情が、すごい繊細な部分まで引き込まれるんです。演劇って、登場人物が記号的な作品もあるじゃないですか。でも、髙山さんの作品は生の人間がそこにいるなって思えるから、感情移入しながら見られます。

髙山:難しいんだけどね。「あなたのこと受け入れたい」って思ってても、演出としてある程度まとめていかなきゃいけないから。全てにイエスって言ってるとまとまらなくなっちゃう。そのせいで、座組みの人たちから「あなたは何がやりたいの?」って言われたこともあったよ。

のりのり:そこが演出の難しいところですね。

髙山:楽しいけどね。自分の予想を超えるものが座組みから出てくると嬉しいし。自分の作品を見て自分が一番楽しめたら、それが一番素敵だなって思う。

のりのり:わかります。自分が見て「めっちゃいいな!」って思う作品を作ろうって毎回思ってます。

 

 

―チラシ作成―

 


髙山:のりのりは、チラシの打ち合わせで毎回「参考にした音楽や本ってありますか?」って聞いてくれるよね。あれっていつからやってるの?

のりのり:いつからだろう…。でも髙山さんに依頼をいただいた頃くらいからですね。
ヒアリングする項目は全部リストみたいにしてて、その項目は増えたり減ったりしているんです。その中で、他の表現方法で表現されたものを持ってきてもらった方が、自分にとっても相手にとっても良いものが出てくるんじゃないかなって思ったことがあって。どうしても(打ち合わせ段階では)想像の域を出ないこともありますから…。もちろん、自分の方でもデザインのイメージに近いものを集めたりしますけど、相手がイメージする音楽とかがあると、よりイメージを共有しやすいかなって。

 

髙山:相手の気持ちや考えを引き出すための共通言語みたいなものだね。それはやっぱり大事?

 

のりのり:大事ですね。例えば「爽やかなデザインでお願いしたいです」って言われたとき、自分の思っている爽やかと、相手の思っている爽やかって違うじゃないですか。同じ言葉を使ってるけど、想像してるものは違うってことは多いので。そこを擦り合わせるために、とにかく深掘ることは意識してます。

 

髙山:今更なんだけど、チラシを作る過程ってどういう流れなの?

 

のりのり:まず打ち合わせをします。チラシのイメージはもちろん、「チラシに何を求めるのか」「このチラシで何を解決したいのか」を定めて、そこからイメージに沿ったデザインを組み立てていきます。
その次は、イメージボードっていう、イメージに近いイラストや音楽などをまとめたボードを作って、その段階で手書きでラフを描いて。その後にイラストや写真などの素材を作って、Illustrator(イラストレーター)(※4)やPhotoshop(フォトショップ)(※5)でデザインするって感じです。

 

髙山:イメージボードには相手から聞いた情報が全部載ってるってこと?

 

のりのり:聞いた情報から、チラシの目的に近いデザインや、単純に表現が近いものを大量にイメージボードに集めるんです。その中から、要素や参考にできるものを抽出します。方向性を固めたり、競合デザインとどう差別化できるか考えたりするのにも使ってますね。

 

髙山:そうだったんだ…!いつも出来上がったものをもらってるから、流れをちゃんと知ったのは初めて!
俺も台本書くときに、漠然とアイディアが思いついたら、とにかくそれに近いものを何でも集めるってことをしてて。使えるかどうかに関わらず、音楽とか、本とか、写真とか、体験談とか色々集めて、その中から少しずつ作品を組み立てていくんだけど…。
のりのりのイメージボードってその段階ってことだよね?

 

のりのり:そうですね。

 

髙山:「聞くことを大事にしたい」って言ってたけど、のりのり側からクライアントに「こうしてほしい」って求めることは何かある?

 

のりのり:熱い想いを持ってきてほしいですね。

 

髙山:というと?

 

のりのり:例えば劇団さんだったら、その劇団さんがどんなことをやる団体なのか、とか、チラシに何を求めるのか、とかは劇団さんによって違うんです。もちろん集客がメインだと思うんですけど…。例えば、チラシの使われ方も劇団さんによって違ってて。手配りだったり、配置メインだったり…。
その中で、全く作品について固まってない状態で、今までどういうチラシを使ってきて、どんな課題を抱えてて、今回でどうなりたいか、とかって聞くと、やっぱり戸惑われるみたいで…。

髙山:「そこまで聞かれるんだ!?」みたいな?

 

のりのり:はい。それで打ち合わせし直したり…。もちろん依頼自体は有難いんです。けど僕は、デザイナーはただおしゃれなチラシを作る人っていうより、宣伝だったり、集客だったり、劇団のプロデュースだったりっていうディレクションを担う側面が強いと思ってるんです。だから色んなことを沢山聞いて…。なので、想いを持ってきてほしいです。

 

髙山:そのチラシに賭ける想い?

 

のりのり:とか、商品や劇団に賭ける想いを沢山聞きたいですね。

 

―チラシの宣伝効果―


髙山:現代は、紙媒体のチラシに効果がどれくらいあるんだろうって言われてるじゃん? 1〜2万部刷ってようやく数人来るかどうからしいけど…。俺もSNSの発達や、映像技術が身近になったりして、宣伝方法がすごく多様化したなって思ってる。でも、演劇の紙チラシって根強く人気あるよね。

のりのり:そうですね。やっぱり1番お金をかけずに効果的な宣伝方法が、演劇にとってはチラシなんじゃないですか?小劇場だと無料で折り込ませてくれるじゃないですか。

髙山;ね!みんな優しいよね!本当に有難い…。

のりのり:普通だったらお金取られてもおかしくないですから。企業がチラシ使って商品を宣伝するなら、そこにめっちゃお金をかけると思いますし。演劇は、自分の作品を見てほしい層に、低コストで自分のチラシを見てもらえる方法がそれなんだと思います。もちろんデザイン代とか印刷代とかはかかりますけど…。

髙山:お互い様って気持ちがあるのかもしれないね。自分も入れてもらうし、自分のところにも入れてあげるし。
俺はそこに、演劇の横のつながりを感じて嬉しくなるよ。

のりのり:いいですよね。

髙山:昔、唐十郎(※6)さんの時代のポスターを見たことがあるんだけど。すごいの。コピー機ないから、全部版画みたいに手で刷ってあって。とにかく主張が強いのね。
それを見たときに、チラシってそれ単体が1個の作品だなって思ったんだ。しかも、チラシって演劇において1番最初に観客の目に触れる部分でしょ。だから、俺はチラシにこだわりたいなって思ったの。たとえチラシに宣伝効果がないって言われたとしても、それでも紙のチラシが残ってほしい。それは、その舞台を思い出したい気持ちもあるんだけど、素敵なチラシってそれだけで1個の作品だから。

のりのり:チラシっていう現物があるものって、それを持つことがすでに1つの体験ですよね。

髙山:そうそう!紙質とかね!トレーシングペーパーみたいな紙に印刷してた団体もあったなぁ。

のりのり:ほかの媒体では与えられない効果があると思います。これだけ紙媒体の衰退や効果の有無が叫ばれていても残ってますからね。やっぱり物として残るのが良いですよね。

髙山:そう考えると、その作品や商品の象徴ってチラシなのかもしれないなって思うよ。SNSでも文章だけよりチラシ画像があった方が目を引くしね。

 

のりのり:インプレッションの数が違いますよね。

髙山:のりのりはデザイナーとして、現代の舞台チラシってどう捉えてるの?

のりのり:実はあまり悲観的に捉えてなくて。僕はとくに紙媒体に特化したデザイナーなんですけど、宣伝美術自体は紙にこだわる必要はないのかもって思ったりもしてます。
でも、作ったチラシをSNSに載っけるだけだと効果が最大化できない気がするんです。SNSは入り口としてはめちゃくちゃ優れてると思うんですけど、日々、沢山の情報が流れてくるので…。そこから先に進むのが難しい媒体だなって思います。
紙媒体のメリットって、物として残ることと、ターゲットに適切に届けられることだと思うんです。SNSを入り口に、チラシでさらに奥に進めたら良いのかもって思います。

 

髙山:確かに、SNSは深く掘っていく媒体ではないよね。逆に紙チラシってそれ1個に集中できる媒体だからいいよね。

 

のりのり:あとはやっぱり、体験としての価値が大きいですね。

 

髙山:本当だよね!いらないって人もいるだろうけど、俺は劇場でチラシ束をもらうとワクワクするタイプだよ。

 

のりのり:僕もです。

 

髙山:やっぱり紙のチラシは残っていってほしいよね。

 

のりのり:残っていってほしいし、残っていくんだろうなって思ってます。

 

髙山:良い言葉!

 

(後半)へ

対談会場 : 赤坂RED/THEATER

※1:2022年10月 北千住BUoYで上演したロマングラスの第3回本公演。
※2:クラブミュージックのサウンドをベースに、グルーヴを以て体験する演劇を創作していた劇団。2022年12月解散。
※3:「共に新たな演劇の第一歩を。」をコンセプトに関東で活動している劇団。
※4:Adobe社が提供しているグラフィックデザインソフトウェア。
※5:Adobe社が提供している画像編集・加工ソフトウェア。
※6:1940-2024年、東京都出身の劇作家・演出家・俳優。劇団「唐組」主宰。アンダーグラウンド演劇の旗手として絶大な人気を誇る。

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ロマングラス番外公演

『まわれサクラ、再びの春へ』

【出演】
伊波悠希、島田遥、まるも、髙山斐七子

【スタッフ】
作・演出 | 髙山拓海 音楽 | エムオカ 舞台監督 | 松林京子 

宣伝美術 | のりのり 企画・制作 | ロマングラス

 

【協力】
劇団ひまわり/街の星座/ノクチルカの実験室/PORIDE/劇団zzZ°

【会場】
スタジオ空洞
https://studiokudoh.blogspot.com/?m=1

JR線/東武線/西武線/東京メトロ各線
「池袋駅」西口下車 徒歩7分

【日時】
2026
3/27(金) 14:00☆ | 19:30
3/28(土) 13:00 | 18:00
3/29(日) 13:00
☆…公開ゲネプロ
(ゲネプロ:本番同様の条件で行うリハーサル)
※受付は開場の30分前
※お支払いは現金のみ
※全席自由・受付順入場

【チケット】
https://ticket.corich.jp/apply/423617/

一般(前売り) | ¥3,500
ゲネプロ割  | ¥3,000
応援チケット | ¥5,000
当日券           | ¥4,000
※未就学児入場不可
※ゲネプロ割は3/27(金)14:00の回のみ適応
※公開ゲネプロは応援チケットでのご予約不可

【扱いチケット】
伊波悠希
https://ticket.corich.jp/apply/423617/005/

島田遥
https://ticket.corich.jp/apply/423617/006/

まるも
https://ticket.corich.jp/apply/423617/004/

髙山斐七子
https://ticket.corich.jp/apply/423617/003/

 

【 応援チケット特典 】
応援チケットをご購入いただいた方に、作中の登場人物たちの

予定を記載した「卓上カレンダー」をプレゼント!
※応援チケットの特典引換は当日会場にて行います。

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